Blog20.ドイツと日本の生産性の違い(中編)

 前編で「ドイツと日本の生産性の違い」を示した。
 今回(中編)は、「日本はなぜそうなのか」について、中根千枝著「タテ社会の人間関係」より分析する。
 次の後編では、「日本はなぜそうなのか」について、自然災害大国の日本人が「自然災害になぜ備えないのか」を分析する。最後に「日本はこれからどうするのか」を考えていく。
<目次>
2.日本はなぜこうなのか?
 2-1.ドイツとの違いを受けて
 2-2.日本人はなぜこうなの?
 2-2-1中根千枝著「タテ社会の人間関係」より分析

 

2.日本はなぜこうなのか?
2-1.ドイツとの違いを受けて
 日本に住んでいると気が付きにくいが、前編で示した放映を観ながら我が国の現場の問題やマネジメント問題がすぐに浮かび上がってきた。
 日本人の多くは、頑張って遅くまで残業して仕事をやり終える。次の日も、また頼まれて頑張って馬車馬のように仕事をする。その場は、やった感を抱くが、どうもおかしい。
     こんな事を繰り返しているうちに心身共に疲弊を感じるようになる。年度末に振り返りすると、当初のテーマがほとんど手付かずになっている。でも気を取り戻して、新年度に挑むが期末がくるとまた同じことに陥る。そして最後はしようがないよね!となる。
  こんなことが多くの企業を指導している中で明確化した。私の様な部外者は利害関係がないので、困り果てている社員は本音で語ってくれる(聞いて欲しいとして)。本当は、皆困り果てており、何とかしたいのだ。しかし、上司に本音で語れないでいる。言わないから伝わらない、伝わらないから改善が進まないという悪循環が起っているのだ。
 
2-2.日本人はなぜこうなの?
 先にもう一度ドイツ人と日本人の違いについて3点確認しておく。
 その一、労働観の違いについて
           ドイツは、国民を労働者として保護してきた。→「良いものは高く!」労働者を優先。
  ・日本は、国民を消費者として保護してきた。→「良いものは安く!」顧客を優先。
  その二、人々の生き方について
           ・自立しているドイツ人
    自分の人生を生きる。そのために働く、仕事を早く終える(合理的に仕事をする)。
    目的のある仕事には、忖度や迎合は必要ない。
  ・サービス旺盛な日本人
    日本人の挨拶は、相手を意識することから始まって、本論に入り、本論を終えて〆の挨拶をする。
    時には、人を思いやり、周りの空気を読む。時には、皆で頑張る、家庭を犠牲にしてでも働く。
 その三、連携の取り方の違い
      ・ドイツ:理にかなった協調(なぜそうするのかが明確)。自分のために合理的に働く。
      ・日本: 和を重んじるので同調に近い(空気を読みあつれきを避ける。暗黙の了解が通用する)。
       時には、同調のために家庭を犠牲にしてでも頑張って働く。
 この違いを受け、直ぐに思いついたのが次の二点である。
  ① 中根千枝著「タテ社会の人間関係」の「日本のムラ社会」
  ② 自然災害大国にありながら、「自然災害に備えない日本人」
  それぞれにつき、2-2-1項と2-2-2項で分析していく。
 
2-2-1.中根千枝著「タテ社会の人間関係」より分析
 私は、Blog17でお伝えした社会人類学研究家の中根千枝氏の「タテ社会の人間関係 一社会の理論に日本文化の特質の答えがあるとみている。つまり、日本国のムラ社会に根差した文化に特徴があると考えた。中根千枝著を引用すると、
① ムラ社会は、世間から閉ざされた農村の生き残り策(江戸時代)であり、単一民族がうまく運営する策(鎖国)である。
② 農村の孤立をまとめる手段が結束であり束縛である。村八分は生き残りの策でもある(掟)。
③ 集団意識は「場(家、村、職場、会社)」に置かれており、「場」を強調する枠単位(家、一族郎党)の社会集団は、「伝統的な道徳的正当性」と「構造的妥協性(誰もが我慢)」に支えられている。枠(家、一族郎党)を強化するために、「一体感を持たせる行動」と「情的に結び付けること(絶えざる人間接触)」で社会安定性が得られる。
 
  次にドイツとの違いについて表現する。
  一つ、外部と閉ざされているので、視野が狭くなり関心ごとが身近なことになる        
  二つ、狭い社会で掟(おきて)という制約を受けて生きている。常に人に迷惑をかけない配慮がなされてい
      る。行動は、常に人への気遣いを第一に考え、自分事は我慢するので「人のため」であり「同調」になる
  三つ、トラブルを起こさないために、常に決まりごとを遵守するので「同調」になる。 理屈であっても改善
       のために仕組みの変更すらやらない。いったん決まったル ールは、時代が変わり意味不明でも守り通す。協
       調」は起り難い
    四つ、ルールや掟に縛られるので、「自分のために生きる」習慣や思想などとんでもないことになる
 
 この様に、ドイツ人との違い、日本人の特質が中根千枝著「タテ社会の人間関係」から読み取ることができる。日本は、欧米の影響を受け考え方が変わりつつあるが、未だに「ムラ社会文化」を変えるまでには至っていない。長い年月で培われた文化を変えるには相当の時間が必要だということである。
 今日のBlogはこの辺にしておく。

 

                                               以上