Blog28.野村野球のすごさを見た
Blog16で「野村野球から学ぶ人材活用法」を掲載した。今年の日本シリーズは、奇しくも野村野球伝承チーム「ヤクルトスワローズ」が優勝した。
今回は、優勝した「ヤクルトスワローズ」について振り返りをしてみたい。
<目次>
1.ヤクルトのすごさを感じた
2.ヤクルトはなぜこうなのか
3.一般の組織もまったく同じ
1.ヤクルトのすごさを感じた
私は、青木選手が好きでMLB時代から応援していた。日本プロ野球に戻ってからも応援したのだが、いつからかヤクルトスワローズのファンになっていた。2021年は最下位からスタートしたが、直ぐに勝率をあげていった。9/16からは急上昇し阪神・巨人を抜き一位を確保した。阪神も頑張ったが、ヤクルトの凄さがはっきりと感じられた。
後半10試合のデッドヒートは、見る我々も一喜一憂して疲れ果てた日々であった。かつて、こんなに疲れた記憶は、私が小学生5年の時の力道山のプロレスであった。床についても興奮して眠れなかった記憶がある。ヤクルト戦の最後の数試合は、不思議と同じように興奮していた。
ヤクルト試合の何がすごかったかといえば、次の三点である。
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1)接戦が多い
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2)負けていても接戦に持ち込む
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3)ぼろ負けが少ない(試合を捨てない)
なぜそうなのかといえば、次の五点があげられる。
・ピッチャーが崩れにくい。打たれても次のピッチャーが抑える
・1~8番まで切れ目のない高打率バッターがそろっている
・すごい代打がいる。すごい交代要員がそろっている
・チームの雰囲気を高揚する者がいる
・監督が審判のジャッジにこだわる。簡単に妥協しない
つまり、見る者にしたら、選手・監督全員が活躍するところが楽しいのだ。さらには、ヤクルトは資金的に潤沢ではないこともあり、スター選手が限られている中で脚光を浴びていない選手が次々と活躍するところも実に楽しい場面であった。
日本シリーズでは、不思議と負ける気がしなかった。
2.ヤクルトスワローズはなぜこうなのか
明確にいえることは、「選手一人一人が、1~9回の戦いの中で強みを発揮していた」ことである。その出場場面を演出したのが野村野球の継承者高津監督であろう。
Blog16.「野村野球から学ぶ人材活用法」で豊橋技術科学大学岡田美智男教授の記事(故野村克也氏(2020年2月没)の“人材の活かし方”)を紹介したが、それが現実のものとなったように思う。私にとり、戦いが現実と思えないほどの凄さを感じたのだ。
ヤクルトが活躍した背景にあるのは、その記事みたいなことが起こっていたのであろう。大事なことなので、岡田教授の記事をもう一度青字で記載しておく。
「野村野球の特徴の一つに、「あり合わせで強さ導く」手法があるという。その背景は、貧乏球団には
一線級のスターを雇い入れる財力はない。それで、他球団で戦力外になったベテランを新しい起用方法で
再起させ、埋もれている選手の力を的確な助言で導き出し、必要な場面でそれらの選手を使うという」。
岡田教授によると、「もともと人間の組織とは、“あり合わせ”の集合体ともいえる。それぞれの長所・短所
を持ったデコボコとした人ばかりである。リーダーはそれをブリコラージュbricolageすべきなのに、個人
に全部の能力を高めよと押し付けがちである。その結果、無限の豊かな解釈が可能であるべき“能力”を、
数多くの評価項目に書き込まれ、ただの数値に変換し、平均化して比べてしまう」と解説されている。
加えて、「今の世の中には、“生産性が低い”“役に立たない”などの言葉で、人間の能力を簡単に見切ろう
とする風潮があるのではないか。野村流“弱者の戦法”には、人間の能力をもっとおおらかに理解するための
ヒントが詰まっていると思う」と指摘されている。
3.一般の組織もまったく同じ
プロ野球球界はプロの集団なので、それぞれの選手にしっかりした野球基盤がある。それで野村野球の効果が引き出せたのであろう。この点が一般人の集団と異なるところだ。
基盤の弱い官民学はどうであろうか。人が近視眼に陥ると、どうしても“早く答えを出せる人” を探し、またその人を高く評価をしてしまう。これは私の経験から出したことだが、早く答えを出せる人は近視眼の人が多く、情報をかき集め加工して答えを出している。比較的IQの高い人に多かった。
組織の仕事は、“過去のこと”、“現在のこと”、“将来のこと”など様々な仕事をマネジメントせねばならない。私の経験では、“現在のこと”が得意な人に“将来のこと”をさせるとはかどりが悪かった。それぞれの仕事は様々な能力・感性を必要とするということである。もう少し事例をあげると、新商品を開発して新規事業を立ち上げるとなれば、必要な仕事は①マーケッティング、②企画、③開発、④生産技術、⑤製造、⑥その他(営業、生産技術、品質管理、資材、生産管理、保全)というように様々な仕事をせねばならない。つまり、事業をするには違った能力・感性の持ち主(多様な人々)を必要とするということである。
恐らく、人は自分の周りに沢山いると思って間違いない。ちょっと我慢して、「能力を顕在化させるための場」を与えること、「育成するための時間」を与えることで必要とする人材が得られると考えてほしい。それが、成熟した経済社会下における組織活動の王道であろう。
野村野球は、多様な人々が存在する社会活動の王道だということである。自治会の活動もまったく同じだ。
2022年のプロ野球界は、ヤクルトスワローズの戦略を受け、他球団も何がしかの手を打ってくるので、ヤクルトスワローズが2022年も優勝するかはわからないが、2021年同様の面白い野球を展開してくれるはずである。
以上
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