Blog3.現場の人達の困りごとを知ろう(その一)

 企業を支援している中で、現場の方から“困りごと”が聞こえてくる。私のような部外のコンサルタントは利害関係がないこともあり、支援先の皆さんが本音で語ってくれるのです。それは、上司や会社に関することばかりである。今回は、“現場オペレータの事例”を二点お伝えしたい。
<目次>
1.現場オペレータの事例Ⅰ
2.現場オペレータの事例Ⅱ
1.現場オペレータの事例Ⅰ
 ある企業で、「本音の語らい」と称して事務職の方に語ってもらったことがある。ここでも語りは全て付箋紙に記載して、なぜなぜ分析を繰り返す語らいである(KFT)。
 初めに、私が「本音の語らい」の主旨(会社の改善活動であること)を説明し、次に一般的な組織人が抱えている問題を説明してから始めたのだが、見事に“組織の呪縛”が解かれ、皆さんが語り始めた。メンバーは3名(20代後半の中堅女性1名、30代後半の中堅男性1名、入社5か月の新人女性1名)である。
 中堅女性がガンガン語りだすと、つられたように中堅男性も遠慮しながら語り始めた。そして新卒女性も遠慮なく語りだした。約1時間でK(関心ごと、困りごと、気になること)を出し、F(意味の明確化、なぜなぜ分析)をやり終えた。そして、T(課題、次にやること)も明確化した。なお、この場に上長は出ていない。
 皆これまでのやり方にじっと堪えていたらしく、一気に不満が噴き出したのだ。普段語らない人達ではあるが、環境を整えると語るのである。この時、伊丹氏の「場のマネジメント」の威力を強烈に感じたものである。
 この後で、お三方の問題・課題をヨコとタテで共有化(同僚、トップ、ミドルと)し、一部は会社の方針へ展開している。
 その数か月後、同企業の熟年の現場男性(60歳前後)二人に同様の「本音の語らい」をしたのだが、問題と課題を全く聞き取ることはできなかった。いえることは、彼らの語りがミドルやトップ層のKFTに似ているということである。引き続き調査・分析を行っているところである。 
2.現場オペレータの事例Ⅱ
 製造の部門長が現場の「再発するヒューマンエラー」の原因系を洗いたいということで、現場の女性3名(30歳後半)に「本音の語らい」をしてもらったことがある。ここでも、先に主旨を説明してから始めたのであるが、見事に現場のドロドロした問題が語られた。
 上司の一番の関心ごとは「再発するヒューマンエラー」であった。
 オペレータ3名のK(困りごと、気になること、関心ごと)をFなぜなぜ分析していくと、大本は機器のバラツキによる不具合が判明した。更になぜなの?を繰り返すと、「この問題は何度も上の人にあげていて、課長が対応することになっていた」という。結局のところ、課長が怠慢していたのである。
 現場の弱いひとり一人が上長に意見するには無理があるのだ。下位層は上司に忖度し、迎合する習慣がついているからである。日本人は、正当であっても上の人に提言・苦言するのが苦手である。多くの人は、上長との交渉を避けて、自分の精神力で何とかしようと行動することが多い。これは非科学的な行為でしかないことが分かる。
 しかし、語る環境を整えてかつ、複数(3~4人)になると「本音の語り」が起こるのだ。この作業は、極めて科学的と言えるであろう。
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