Blog4.現場の人達の困りごとを知ろう(その二)

 企業を支援している中で、現場の方から“困りごと”が聞こえてくる。私のような部外のコンサルタントは利害関係がないこともあり、支援先の皆さんが本音で語ってくれるのです。普段の組織活動では聞くことができないことである。それは、上司や会社に関することばかりである。
 今回は、“部長の事例”を二点お伝えしたい。
<目次>
1.部長の事例Ⅰ
2.部長の事例Ⅱ
1.部長の事例Ⅰ
 時々部長がきて「何に困っているの?本音のところを語って欲しい」という。それで皆さんどうするのと聞くと、何も語ることはないという。結局、語っても差しさわりないことばかりになる。
 なぜ語らないのと聞くと、彼らの言い分はこうだ。これまで現場の困りごとと改善要求を上げてきたが何一つ聞き入れてくれなかったという。語る意味も語る意欲もないということである。
 普段現場の声を聞き入れない上司に限って聞きに来るようだ。それも年に数度しかないようだ。よく聞くと、どうも部長の上司から問いかけられて確認に来ているようである。
 本来、マネジャーである課長や部長は、現場を支援する役目が30%以上、上司を支援する役目が30%以上あると認識すべきであろう。現場に関して言えば、普段から現場情報を共有化できる仕組みを作ることだ。それは、聞くというよりも現場の方に語らせ、現場の人に課題をばらしてもらうのが一番である。課題ばらし方法は、「経営のための品質管理心得帳」第42節に記載してあるので参考にして欲しい。
 この活動において、上司はメンバーに議論の目的と目標を提示するだけで良い。現場の人達による議論に口を挟むと、彼らは語らなくなる。現場の問題と課題は現場の人達が一番よく知っている。彼らの語りを聞いていると、最初は他責とも言える不満ばかりであるが、分析が進むにつれて自分達の課題に変わっていく。最後は、生産性を高めるための課題、つまり会社の経営課題となる。同時に、上司の問題は消え失せている。
 不思議に思えるかもしれないが、そうなるのだ。当事者に主体性を持たせる行為がそうさせるようだ。現場の方と役職者の方の役割が根本的に異なっており、現場のことは外部者には分かり難いということである。特に表に現れにくい心理面は「本音の語らい」が必要だということである。
 何故現場の人に会社の課題が見えるのか、と疑問を抱く人が多いと思うが、実はこうだ。現場は、良くも悪くも会社の集大成が顕在化するところである。トップの仕事、本社スタッフの仕事、開発の仕事、営業の仕事、購買の仕事、生産技術の仕事、製造スタッフの仕事など全業務の成果が現れるところが現場である。不幸にもどこかでミスがあり、途中のチェック網を通過すると最後の工程である現場に現れる。そして、そのしわ寄せを一手に受けているのが現場である。
 実は、普段マネジャーやトップ層が一番欲している情報なのである。現場の人達の「本音の語らい」をミドルやトップが受けキチンと分析すれば会社の問題点、弱点部が見事に見えてくるということである。タテ連携によって低いコストで経営改善が可能になる。これが経営である。
 
2.部長の事例Ⅱ
 比較的小さな規模の企業で聞くことである。部長クラスが、直属の部下(課長)を飛ばして現場のリーダーに直接指示をするという。この行為は、完全に職権乱用としか言いようがない。この行為で外された直属部下(課長)は感情を害するであろう。こうして指揮命令系がおかしくなるのだ。
 日本のムラ社会は、親分子分というタテ社会の人間関係(情感)でうまく回る要素が大きいといえる。この文化が、企業や行政にも入り込み人間関係を保っているのだ。
 親分子分のタテ社会は、結構強固に繋がっているのだが、感情を害する行為はじわりじわりと信頼関係が壊れていく。西欧のような契約社会だと一気に関係が崩壊するのだが、日本人の場合は契約が希薄なので一気に起り難いのだが、感情面がおかしくなると取り返しがつかなくなる。日本人が起こしやすいマネジメント問題の一つである。
 職位を預かったマネジャーは、ヒエラルキー構造の意味を理解して運用せぬととんでもないことになる。

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