Blog5. ヒエラルキーという組織構造の問題と対応法

 今日は、ヒエラルキー構造の問題に関して、研究成果の一部をお伝えする。
 詳細は、「経営のための品質管理心得帳」第4章第1節で解説してある。
<目次>
1.なぜ組織のタテ連携がうまく取れないのか?
2.この様になり易い理由の一つ
3.どうすればよいのか?
 1.なぜ組織のタテ連携が上手く取れないのか?
 企業や行政におけるヒエラルキー構造は、経営の目的を果たすための道具である。つまり、権限を委譲された人達が、目的を果たすために権限を行使して組織の成果を出さなければならない。
 ところが、多くの組織体でそのような理解をしている組織人は少ない。その理由であるが、創業時の人達は自ら人を雇用し組織を作り上げていくので、雇用や組織の意味を理解している。その後、事業が成り立ち安定して時間が経過していくと、世代交代が起こり“雇用したこと”や“組織の意味”が薄れていく(そのことが当たり前になり、意味が曖昧になっていく)。そして、創業時の考え方(精神)を伝承する行為が止まる。組織の目的を失うと運営は危険になる。組織文化はこうして崩れていくようだ。
 何年も組織の原点を失ったままにしておくと、組織は次に示す問題が起きやすくなる。
 一つ目は、ヒエラルキー構造を理解せぬままに、統制を目的に“便利な道具”として用いやすくなる。上の者にしたら居心地が良いので、自ら改善する者は少ない。
 二つ目は、ヒエラルキー構造におけるトップ・ミドル・ボトム層の立ち位置が異なることから生じる断絶である。その関係を分かり易く表現すると、次の図(こちら)のようになる。
 トップ、ミドル、ボトムの視点が異なるので、どうしても価値観に違いが起こる。そして不幸にも階層間に断絶が起こりやすくなる。これがヒエラルキー構造の宿命でもある。
ヒエラルキー構造の目的を意図せずに用いると、時として自分最適(部分最適)に走ってしまい連携が崩れていくことがある。時に上位層は権限を権力化する(できる)。それに対して下位層は上位層に対して“忖度”し“迎合”して(できる)対抗する。こうなると、正に軍隊の統制と同じ働きになり、下位層は常に“馬車馬”せざるを得なくなる。
 こういった現象を問題だと認識しても、見かけ上組織は動き事業は一定の成果を出して
いるので誰も止める行為はとらない。これが悪循環の構造であり、数年も経つと悪しき組織文化を形成してしまい後戻りが難しくなる。
 あらゆる組織が起こす社会問題の大半はこの様にして起きるとみている。
 
2.この様になり易い理由の一つ
 この様に陥る理由は、組織人がヒエラルキー構造の呪縛を受けているからだとみている。
 その典型が日本のタテ社会文化があるとみる。ムラの統制を崩さぬように、①「上が偉い」という風土、②「村八分」という風土で人々は暗黙のうちに管理されているのだ。しかも日本人は、この文化を無意識のうちに組織に持ち込んでいると言えよう。
 もう一つは、上記文化の影響を受けるためであろう。誰もが、普段語れているというが、実はほとんど“本音の語り”ができていないのが実状である。こそこそ話になると誹謗中書も辞さない人達が、公の場では“場の空気”を読み取り表面的な語りにとどめてしまう。その結果、物事の本質までたどり着かないでいる。加えて、表面的な語りは信頼関係ができないという問題がある。 
 
3.どうすればよいの?
 一つ目は、「本音の語らい」をすること。自分達の立ち位置における困りごとを語ることで簡単に組織の課題をばらすことができる。我慢をせずに、不満を他責にしてぶちまけるとより、課題が鮮明になってくる。ここまでばらすと、課題は難しくなくなる。
 多くの組織で困りごとが解決しない訳は、広義の課題(沢山の問題と課題)が団子になっており、ほぐせないままにテーマ化するからである。
 本音語りの驚きは、不満をぶちまけたところで、課題は必ず自分にも返ってくるのだ。そして、ばらした本人が主体的に取り組むのである。
 二つ目は、組織構造における役割を正しく認識すること。職位(立ち位置)の役割であるが、契約思考が弱い日本の場合は、意外とボヤっとしたままに職位を与えられ、また受けている人が多い。本来、マネジャーは一つの専門職なので、訓練・体験させなければならないのだができていないケースが多い(これ以上の解説は控える)。
 次は、ボトム、ミドル、トップの役割を概念として示したものである(こちら)。組織の役割が曖昧なケースは、これくらい明確に示しておかねばならないと考えてのことである。詳細は、「経営のための品質管理心得帳」第4章第1節で解説してある。 
                                               以上