今回は、現代の物づくりやサービスビジネスの礎を築いたフレデリック.W.テイラーの科学的管理法について紹介します。
<目次>
1.まえがき
2.科学的管理法の誕生
3.科学的管理法のエッセンス
4.科学的管理法導入の注意点
1.まえおき
テイラーは、仕事の生産性を著しく高める方法を科学的管理に見出し「科学的管理法」を提唱した。例えば、労働集約的作業の場合、一人ひとりの人間を物ではなく人として見ていく、つまり現代風にいえば「人間工学的」な見方で管理することを事例で示している。また高度な作業では、科学的管理法則が極めて複雑になるため、教養のある人の手助けを受けて“作業法則を探求”“人材選定”“人材育成”“人材訓練”などが不可欠であることを示している。
現代行われている「マネジメント」の意味――なぜそうするのか、一つひとつの深い意味=先人が構築した原点――が理解できると思う。またテイラーの考え方を理解できれば、皆さんが今抱えている困りごとを解決するヒントが得られるはずだ。
ここでは、フレデリックW.テイラー著、有賀裕子訳「|新訳|科学的管理法マネジメントの原点」2013.9.9第4刷、ダイヤモンド社発行を引用し、3項「科学的管理法のエッセンス」と4項「科学的管理法導入の注意点」を示す。書籍は、現在も販売されているので購読することをお勧めする。
2.科学的管理法の誕生
20世紀初頭まで、アメリカの企業経営は、現在とられている「マネジメント」ができておらず、ほとんど成り行きであった。その結果、労働者にそのしわ寄せが回るという問題を抱えていた。
こういった時代に経営問題と労働問題そして社会問題を改善しようと、「科学的管理法」が生まれた。
現在、多くの企業で行われている生産技術・生産管理の原点がテイラーの科学的管理である。
3.科学的管理法のエッセンス
産業界全体がこれまでの「自主性とインセンティブを柱としたマネジメント」をやみくもに信仰しているため、「より優れたマネジメント手法がある」とただ理屈で説いただけでは、世界のマネジャーたちの納得は得られ難いと考えた。そこで「自主性とインセンティブを柱としたマネジメント」と「科学的管理法」の二つについて、現場での事例をふんだんに織り交ぜて後者の方が圧倒的に優れていることを示している――次の5事例――。
事例1 銑鉄の運搬作業における取組
事例2 シャベルすくい作業の研究
事例3 レンガ積みにおける検証
事例4 ベアリング用ボールの検品に対する考察
事例5 高度な金属切削業務における探索
次に科学的管理法のエッセンスを2点示す。
その一、マネジャーの四つの新しい任務
①一人ひとり、一つひとつの作業について、従来の経験則に代わる科学的手法を設ける。
②マネジャーが科学的な観点から人材の採用、訓練、指導などを行う。
③部下たちと力を合わせて、開発した科学的手法の原則を、現場の作業に確実に反映させる。
④マネジャーと働き手が、仕事と責任をほぼ均等に分け合う。マネジメントはマネジャーが引き受ける。
この様に、働き手が自主性を発揮するほか、マネジャーが新たな仕事を担うからこそ――
マネジャーと働き手の役割分担――、科学的管理法は旧来のマネジメントよりもはるかに
効率が良い。
その二、作業プランを作成し、実行する
一人ひとりの作業プランを遅くとも前日までにはマネジャーが完成させ、紙に書いて本人たちに渡す。そして、作業に伴う課題は作業者とマネジャーと二人三脚で解決する。
4.科学的管理法導入の注意点
1).性急な導入が残した教訓
新しいやり方へ移行する際の課題は、すべてのマネジャー及び工員の発想や習慣を根本的に変える必要がある。はじめはゆっくり過ぎるほどの時間をかけ、まずは一人だけを対象とすべきである。最初の一人が新しいやり方が自分に大きなメリットがあると得心するまでは、それ以上の変革を進めるべきではない(3~5年かかる)。
2).導入に際しての注意点
企業の取締役が科学的管理法の基本原則を十分に理解し、尊重しない限り、移行には乗り出すべきではない。
以上